私たちはどう生きるのか - 母のキャリアの物語
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「内定が出たよ。転職しようと思う。」
先日、母からそんな連絡が来た。
母は若い頃、放射線技師として病院で働いていた。そのキャリア観は、同じく病院に勤めていた祖母の影響を受けているかもしれない。ただ、祖母と違うのは、母が出産を機に仕事を辞めたことだ。
母は自身の幼少期をこう話してくれたことがある。「母(祖母)は病院で夜遅くまで働いていたから、学校から帰ってくると晩ご飯はよく屋台のラーメンに行っていた。だから私にとって母の味の記憶があまりないんだよね。」
出産後の母は、パートで様々な職場を転々とした。家ではお金の話をあまりしなかったが、父の給料だけでは生活が厳しかったのだと思う。一度だけ、母はこんなことを口にした。「もし、私が出産後に病院に復帰していたら、今頃父の給料を大幅に上回っていたと思う。」その言葉は私に大きな衝撃を与えた。
母は仕事熱心なタイプだった。「ただ給料がもらえれば良いとは思っていない。仕事するからには徹底的にやったほうが楽しいに決まっている。」そんな信念を持ち、病院でのキャリアを生かすために登録販売士の資格を取得し、ドラッグストアなどで働くようになった。
そんな母も、定年が近づいてきた。
ある日、「病院の放射線技師の求人があるんだけれど、応募しようか悩んでいる。」と相談された時は驚いた。父の病気が見つかり、その治療がひと段落したタイミングだった。母にとっても、人生の転機だったのかもしれない。
そして先日、母から「転職が決まった」と連絡が来た。
母が病院を辞めたことを後悔していたのかどうか、私にはわからない。ただ確かなのは、母が自分の人生に向き合い、新たな一歩を踏み出したということだ。そんな母の新しい挑戦を、私は心から応援したいと思う。